大島莉紗 〜パリ国立オペラ座からの便り〜

パリ国立オペラ座管弦楽団のヴァイオリン奏者によるブログ。

次期監督デュダメル

オペラ座の次期音楽監督にデュダメルが就任すると、今日発表されました。

 

音楽監督ジョルダンが今年の9月からウィーンのオペラに行く事は何年も前に発表されていたものの、その後任については全く音沙汰がなく、気を揉んでいました。

かなり前から3人の有力候補の名前が噂で挙がっていたのですが、私としては誰にも興味を持てず…シンフォニーオーケストラと違い、オペラは拘束時間も長いし、他にお金がかかりすぎるので指揮者に回すお金も少なくなるために、ビッグネームはまず無理というのが通説です。

 

しかし降って湧いたようにデュダメルの名前が聞こえるようになり、びっくりはしたものの、どうせフェイクだろうと期待しないように努めました。そして数ヶ月前、デュダメルの故郷ベネズエラ経由で彼が就任するとのニュースが飛び込んで来ました。実は1年も前から決まっていて、オーケストラの委員の人達は知っていたようなのですが、箝口令が敷かれていたらしいのです。そのニュースを受けて、これでやっと喋ることができると彼らが喜んだのも束の間。

肝心のオペラ座がいつまでたっても発表しません。そのうちにメディアもストライキやコロナで赤字転換したオペラ座には、スーパースターのデュダメルに支払う術がないなどと報道し始めたので、やはり無理だったのかと思っていました。

 

「来週次期音楽監督を発表します」という知らせが何度も来て、いい加減うんざりしていた数日前、次期音楽監督がzoomでお話ししますというお知らせが来ました。そこにも名前は記されておらず、痺れを切らしたオケのメンバーが、その人はベネズエラから来る人ですか?と質問した所、それは答えられないので当日zoom上で確認してください。そしてくれぐれも他言しないように。と、しつこい程の通達がありました。

 

そして午後にzoomでのお話が予定されていた今日の午前中、オペラ座から正式に発表がありました。

 

オーケストラの委員が代表して質問をし、スペイン語のできるメンバーが通訳をし、それにデュダメルが答えるという形で1時間弱お話がありました。

今後の予定やレパートリーについてが主でしたが、特に印象的だったのが「何よりも大切なのは私達は音楽という偉大なる遺産を若い人達に繋いでいかないといけない。その為に教育プログラムが必要なのだ」ということを力説していた事です。エル・システマによって育ったマエストロにとっては、社会還元する事が活動の柱となっているのでしょう。

 

これから6年間、彼と一緒に仕事ができることが本当に嬉しいです。

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