大島莉紗 〜パリ国立オペラ座からの便り〜

パリ国立オペラ座管弦楽団のヴァイオリン奏者によるブログ。

ロミオとジュリエット

プロコフィエフのバレエ「ロミオとジュリエット」の練習が終わり、初日を迎えるのみとなりました。かなりの公演数があるので、青と緑の二つのグループで分担しています。

 

この曲は私自身、バイオリンとピアノの編曲版でCDを出していますし、オペラ座でも第1バイオリンしか弾いた事がなかったのですが、今回は初めての第2バイオリンです。世界のほぼ全ての国は入団試験の際、第1か第2かパート別に試験が行われますが、何故かフランスは分けられておらず、バイオリンパートとしての募集になります。その為どちらも弾かなければなりません。

 

毎回交互に変わる訳でもなく、曲によってはどちらかばかりという場合もあります。今回のロミオとジュリエットは曲自体は知り尽くしているのに、第2を弾くのは初めて。入団試験で必ず出る戦闘場面の難しいパッセージは、どちらもほぼ同じ事を弾いているのですが、第2だとたまに途中で下に降りないといけません。しかし指が勝手に上に上がってしまう。大きな文字でマークはしていますが、かなり集中しないとすぐに間違え、その都度イライラが増強されます。

 

指揮はバレエ専門でオペラ座にもよく来るパーン氏。特にプロコフィエフバレエ音楽はオーケストラだけで演奏するのも大変なのに、舞台上のバレエに合わせるという別の作業があります。ダンサーが出てくるタイミングや、回転するタイミングなど、全て知り尽くさなければ合わせられません。

またオペラの場合は主権は指揮者にあり、歌手のテンポに合わせると言う事は余程のことがない限りはありませんが、バレエの場合は完全に主権はバレリーナ。リハーサル中もテンポに文句を言うダンサーは結構います。

その為音楽の流れも変な事になりがちですし、指揮者も舞台に合わせる事に精一杯で音楽は二の次。

 

プロコフィエフストラヴィンスキーなどバレエ作品の名曲は多く、演奏するのは最高に楽しい筈なのに、音楽ができずストレスが溜まりまくるのは否めません。

とは言え、綺麗な舞台に素敵なバレリーナ達の舞。毎回心をときめかして見えにくい舞台を必死になって見ていました。が…自分の好きなバレリーナが皆引退してしまったからなのか、自分が歳を取ってバレリーナの年齢との乖離が大きくなりすぎてしまったのか、飽きてしまったのかわかりませんが、以前と比べると舞台への興味がすっかり失せていると感じてしまいます。またお気に入りを見つけてときめきを持つようにしないと…