大島莉紗 〜パリ国立オペラ座からの便り〜

パリ国立オペラ座管弦楽団のヴァイオリン奏者によるブログ。

プライバシーの定義

前回少し記述した抗原検査。

次の週に仕事がある人は金曜日に検査を受けなければなりません。オペラ座の観客スペースのロビーに特別ブースが作られ、近くのクリニックから派遣された技師によって行われます。

 

検査する場所の前にある大きなテーブルに、個人データが記載されているシールシートが全員分並べられ、そこから自分の名前のものを取り、検査時に渡すのですが、名前より何故か太い文字で目立つのが年齢。若い人は気にならないでしょうが、こちらは隠したい事実。何故生年月日と同じくらい小さい文字にしないのか…年齢によって検査に違いがあるわけでもないのに…

 

日本では気を遣って年齢はなかなか聞きませんし、イギリスでも聞かれた事はなかった。しかしフランスは意外にもあからさまによく年齢を聞かれ、年の話が大好きです。職場でも大声で人の年齢を何度も何度も聞く…どこにプライバシーがあるのだか…

 

その一方でプライバシーなど関係なく、公表しないとまずい所にプライバシーを持ち出す。

10月に行った唯一の観客を入れたコンサート。当時は演奏中にマスクの義務はなく、ほぼ全員がコンサートでマスクを着用していませんでした。唯一の例外が私。人からどう思われようが、感染するよりマシ。日本ならともかく、フランスで重症化したら命の保証もないと思い、本番中もマスクを着用していました。

 

そのコンサートの数日後に行われていたリハーサルで、急にオペラの医務室に秘密裏に呼び出されました。「コンサートで私の後ろに座っていた人が陽性になった」と。距離から見ると私は濃厚接触者に当たり、マスクをしていたかを問われました。サージカルマスクをしていた事で、私は隔離を逃れましたが、その人の隣に座っていた人はしていなかった為に隔離。

 

しかしその一連の事はオーケストラ内でも全く発表されないままでした。プライバシーに関わるから発表しないそうです。これはプライバシーは関係なく必要な情報だと思うのですが…演奏中は近くにいなくてもマスク無しで至近距離で話している人もいる筈なのに…

突然来なくなった2人を訝しみ、噂が広がり皆の知る所となりましたが…

 

フランス人のプライバシーの定義は理解できません。そしてこの様なおかしな感覚が感染拡大に大きく貢献している気がします。